シリーズ企画展示「先生の推し本」第18回

「先生方のおすすめの本を知りたい!」という多くの学生の皆さんからのリクエストにお応えし、シリーズ企画展示「先生の推し本」としてお茶大の先生方おすすめの本を紹介しています。

先生方には、次の3つのテーマから1つ選択して、推薦いただきました。
  ① 専門からの推薦図書(専門領域の基本文献、その分野に進まれるきっかけとなった図書など)
  ② 個人的な興味・関心からの推薦図書
  (読後の印象がよかったもの、思い出に残っているもの、趣味・個人的関心に関係する図書など)
  ③ お茶大生に読んでほしい本(専門にかかわらず、大学生にぜひ読んでほしい推薦図書)

推薦いただいた本のリストと先生方からのコメントは、こちらのページで見ることができるほか、図書館1階スカイグローバルラーニングコモンズ には実物を展示しています。

展示している本は、手に取ってご利用になれるほか、貸出も可能です(一部貸出不可のものもあります)。
ご来館の際はぜひお立ち寄りください。

このホームページや図書館で展示をご覧になった方は、アンケートにご感想をお寄せください。
アンケートはこちらからお願いします。

第18回 平山雄大 先生(グローバル協力センター) 2026年1月13日~2026年3月末

 テーマ 【日本・ブータン国交樹立40周年】ブータンを知るための10冊   <テーマ選択①>

グローバル協力センター講師の平山です。これまで比較・国際教育学を専門に研究を続け、現在は主に、南アジアの小国ブータン(Kingdom of Bhutan)の教育問題、また教育に限らず広くブータンを巡る諸相を研究しています。今回の「先生の推し本」企画では、ブータンを理解するうえで有益な本を10冊(+視聴覚資料を1点)紹介したいと思います。

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早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了、同博士後期課程満期退学。
早稲田大学教育総合研究所助手、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)助教、同講師を経て、2021年よりお茶の水女子大学グローバル協力センター講師。
専門は、教育学、地域研究。本学ではブータン連続セミナーを開催しており、ブータンの研究と交流に取り組んでいる。


平山先生の推し本 一覧(2026/1/13)
PDFでの一覧はこちらです。

書名 / 著者等.
(出版社, 刊行年月. シリーズ名)
配架場所
請求記号
先生からのコメント
ブータン王国の教育変容 : 近代化と「幸福」のゆくえ / 杉本均編. (岩波書店, 2016.8) 図書館一般図書
372.2 /B96
【ブータンの教育事情を解き明かす1冊!】
本書は、編著者の杉本均先生をはじめとした京都大学大学院教育学研究科の先生がたが1990年代から行ってこられたブータン教育研究の集大成です。ブータンの若者の「伝統」と「近代」に対する意識の変化について、国民総幸福(Gross National Happiness: GNH)というブータンの開発哲学と教育の関わりについて、試験制度を通した若者のキャリア選択の実態について、ブータンの特別支援教育の現状と課題について等、先生がたの研究成果が詳しく記されています。
教育からみる南アジア社会 : 交錯する機会と苦悩 / 小原優貴 [ほか] 編著. (玉川大学出版部, 2022.3) 図書館一般図書
372.2 /Ky4
【ブータンを含む南アジア各国の教育に迫る1冊!】
インド、ネパール、バングラデシュ、パキスタン等、南アジア各国の教育事情を「第I部 学びの風景」、「第II部 教育熱」、「第III部 言語:階層・国家・グローバリゼーション」、「第IV部 教育の市民形成の諸相:国家と社会のかかわり」の4部構成で紹介している本です。ブータンに関しては、複雑な言語事情や英語を教授言語とする学校教育の現状に関して第III部で、近代化の推進と学校教育内容の変遷に関して第IV部で取り上げられています。他国の教育事情との比較もしやすく、参考文献・資料のリストも充実しており、楽しく学べる本になっています。
ブータンの歴史 : ブータン小・中学校歴史教科書 / ブータン王国教育省教育部編 ; 大久保ひとみ訳. (明石書店, 2008.4. 世界の教科書シリーズ ; 18) 図書館一般図書
225 /B96
【ブータンの教科書の翻訳本!】
明石書店の「世界の教科書シリーズ」のひとつがこのブータンの歴史教科書で、本書には、クラス6(日本の小学6年生程度)、クラス7(日本の中学1年生程度)、クラス8(日本の中学2年生程度)の歴史教科書の全訳が掲載されています。教科書にはそれぞれの国のお国柄が色濃く反映され、そこが国際比較の観点からも面白いポイントだと思いますが、本書に掲載されている教科書も非常に「ブータン的」な内容です。例えば、17世紀の国家統一以前の記述は基本的に「偉人(僧侶)のブータン来訪歴」となっており、国の歴史と仏教の伝来・普及が切り離せない関係にあることが分かります。
秘境ブータン / 中尾佐助著. (岩波書店, 2011.9. 岩波現代文庫 ; 社会 ; 229) 図書館一般図書
292 /N41
【ブータン関係者必読の書!(その1)】
日本で初めてまとまったかたちでブータンを紹介した著作で、ブータンに関わる人間にとって「必読の書」と言える名著です。「避けては通れない1冊」とも言えるかもしれません。1959年に毎日新聞社から出版され、その後長らく絶版になっていましたが、岩波書店から復刊されました。内容は、著者の中尾佐助先生が約半年間ブータンを調査して回られた記録です。ご専門(植物学)に関する記述はもちろん深く勉強になりますが、ブータン入国を巡るエピソードや自動車道路のなかった当時のブータンの旅路等、臨場感ある文章に胸が熱くなります。
ブータン神秘の王国 / 西岡京治, 西岡里子著. (NTT出版, 1998.11. 気球の本) 図書館一般図書
382.2 /N86
【ブータン関係者必読の書!(その2)】
『秘境ブータン』と並び、ブータンに関わる人間にとって「必読の書」と言える名著です。1964年から1992年までブータンの農業開発・地域開発に尽力され、「ブータンの農業の父」と称される西岡京治氏と、奥さまである里子氏の共著です。ブータンが近代化を目指し国家開発を加速させた1960~70年代のブータンを知ることができる本は(日本語のものもその他の言語のものも)限られますが、本書には、ブータンでの日々の暮らしを通した生の声、そして生活習慣全般に対する鋭い考察が貴重すぎる写真の数々とともに収められています。
ブータン : 変貌するヒマラヤの仏教王国 / 今枝由郎 著. 新装増補版. (大東出版社, 2013.12) 図書館一般図書
302.2 /I41
【ブータンの諸相に関して広く学べる1冊!】
本書は、一般向けのブータン概説書です。初版刊行から20年を経て「新装増補版」が刊行されました。民族、言語、歴史から国家制度・機構、宗教、ブータン人気質にいたるまで幅広いテーマを取り扱っており、増補された最後の3つの章を含め、非常に読みごたえがあります。著者の今枝由郎先生は、国立図書館の顧問として1981年から1990年までブータンに赴任されていた研究者です。チベット研究・ブータン研究の大家でいらっしゃり、専門書を含め多くの著作をお持ちです。
ブータンの瘋狂聖 : ドゥクパ・クンレー伝 / ゲンデュン・リンチェン編 ; 今枝由郎訳. (岩波書店, 2017.12. 岩波文庫) 図書館文庫・新書
289.2 /B78
【ブータン仏教に対する理解が深まる作品!】
本書は、ドゥクパ・クンレー(1455-1529)という、奔放な振る舞いとユーモアで人々に仏教の真理を伝えた遊行僧=瘋狂聖(「ふうきょうひじり」と読みます)の逸話集です。ドゥクパ・クンレーは実在の人物で、チベット及びブータンを中心に活躍した僧侶です。ブータンでは現在も絶大な人気を誇っており、ブータン人なら誰でも彼にまつわる逸話を複数知っているはずです。逸話の多くは「聖と性」の間を往来し、いわゆる「下ネタ」も多いのですが、そうした点も(というか、そうした点こそが?)ブータンの人々に愛される理由のようです。
ブータンの笑顔 : 新米教師が、ブータンの子どもたちと過ごした3年間 / 関健作写真・文. (径書房, 2013.7) 図書館一般図書 
292 /Se24
【ブータンの学校で3年間働かれたかたの体験談!】
著者の関健作氏は、JICA(独立行政法人国際協力機構)が行っている海外ボランティア派遣事業に参加し、2007年から2010年まで、ブータン東部のタシ・ヤンツェ県の学校で体育教師をされたかたです。本書には、20代前半でブータンに赴いた著者の奮闘や気づきが赤裸々に綴られており、また、ブータンを知らない人も逆によく知っている人も思わず微笑んでしまう楽しいエピソードに溢れています。現在は写真家としてご活躍中の著者が撮影された、美しい写真も多く掲載されています。
ブータン : 「幸福な国」の不都合な真実 / 根本かおる著. (河出書房新社, 2012.9) 図書館一般図書 
316 /N64
【ブータンで発生した難民問題に迫る1冊!】
ブータンでは1990年代前半に、主に南部地域から総勢10万人以上とも言われる「ネパール系住民」が国外(国境を面しているインド)に流出するという難民問題が発生しました。著者の根本かおる氏は、難民たちが避難生活を送るネパール国内のキャンプでの救助活動に、インターンやUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の事務所長として関わられたご経験から本書を記されました。本をまとめられるにあたって、外部の資料だけではなく例えばブータンの国会議事録等にもあたられていて、研究調査の手法という視点からも勉強になる良書です。
地球の歩き方 / 地球の歩き方編集室著作編集 ; D31 ブータン 2026-2027年版. (地球の歩き方, 2025.10) 図書館グローバルスタディ資料
292 /C44
【ブータンの情報を網羅したガイドブック!】
巻頭特集、各地区(西部、中部、東部の全20県)紹介、基本情報、旅の準備と技術、龍国読本、コラム……と全体を通して情報量が豊富で、じっくり読み込めば、かなりのブータン通になれるだろう良質のガイドブックです。ブータンはコロナ禍の中、2020年3月から2022年9月まで外国人観光客の受入を停止していましたが、受入再開後に観光政策が大きく変わりました。本書には、旅のスタイルの変更を含めた最新情報が分かりやすくまとめられています。今回7年半ぶりに改訂され、内容も紙質もパワーアップしました。
ブータン山の教室 / パオ・チョニン・ドルジ監督・脚本.(ドマ (発売),  [2021], c2019) 図書館視聴覚資料
778ZZ1-vd /D87
【国内外で好評を得たブータン映画!】
ブータン人のパオ・チョニン・ドルジ氏が監督を務めた映画(原題Lunana: A Yak in the Classroom)。オーストラリアに行くことを夢見る都会の若者である教師ウゲンが、ガサ県ルナナ郡という僻地の学校に赴任し成長する心温まる物語です。若者の海外志向や地域間格差の拡大等、ブータンの「今」を詰め込んだ作品と言ってもよいかもしれません。日本でも2021年4月から全国各地の映画館で上映されましたが、その後第94回アカデミー賞国際長編映画賞の最終ノミネート(5作品)に選ばれ大きな話題になりました。※余談ですが、このとき国際長編映画賞を受賞したのは日本の「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)でした。

平山先生(2026/1/16)

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展示の様子

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[ポスターはこちら]

過去のシリーズ企画展示

第1回 加藤美砂子先生 乱読のススメ
第2回 三浦徹先生    発見と行動
第3回 小谷眞男先生   わたしを ・ なした ・ 本たち(とカルタ)
第4回 松島のり子先生 原点――そこから、それから。
第5回 難波知子先生  読書嫌いの私が出会った本 〈小さいおうち〉から〈青春の終わり〉・〈お別れの始まり〉まで
第6回 浅本紀子先生  私の思い出本~大学入学してから節目の時にあった本たち~
第7回 赤松利恵先生  地球環境の視点から毎日の食生活を考える
第8回 浅田徹先生   自分の研究観を作ったのは、他の領域の本だった
第9回 福本まあや先生  ダンスを語ろう、身体を知ろう。
第10回 米田俊彦先生      辛口の本をぜひ。
第11回 井上登喜子先生  わたしを動かした本
第12回 五十嵐悠紀先生 「使いやすさ」について考えてみよう~ヒューマンコンピュータインタラクション分野への誘い~
第13回 森山新先生    ことばの学びが世界の対立を越える道をつくる
第14回 大薮海先生    学問への入り口はさまざま―私はマンガとゲームから入りました―
第15回 千葉優作先生   数学者・物理学者の人生
第16回 佐藤有理先生   トップ研究者の言葉から刺激をもらう
第17回 小玉亮子先生   面白いは無限大