シリーズ企画展示「先生の推し本」第10回

「先生方のおすすめの本を知りたい!」という多くの学生の皆さんからのリクエストにお応えし、シリーズ企画展示「先生の推し本」としてお茶大の先生方おすすめの本を紹介しています。

先生方には、次の3つのテーマから1つ選択して、推薦いただきました。
  ① 専門からの推薦図書(専門領域の基本文献、その分野に進まれるきっかけとなった図書など)
  ② 個人的な興味・関心からの推薦図書
  (読後の印象がよかったもの、思い出に残っているもの、趣味・個人的関心に関係する図書など)
  ③ お茶大生に読んでほしい本(専門にかかわらず、大学生にぜひ読んでほしい推薦図書)

推薦いただいた本のリストと先生方からのコメントは、こちらのページで見ることができるほか、図書館1階スカイグローバルラーニングコモンズには実物を展示しています。

展示している本は、手に取ってご利用になれるほか、貸出も可能です(一部貸出不可のものもあります)。
ご来館の際はぜひお立ち寄りください。

このホームページや図書館で展示をご覧になった方は、アンケートにご感想をお寄せください。
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第10回 米田俊彦先生(文教育学部人間社会科学科) 2024年3月4日~2024年5月末

 テーマ 辛口の本をぜひ。  <テーマ選択②>

大学にいる間にぜひ手に取ってほしい本です。高校までの社会科や地歴公民の教科書には書いてなくても、知っておくべきことはたくさんあります。その本が対象としている歴史的な事実の古い順に並べてあります。それぞれ、辛さの度合いを1辛~5辛で表示しておきますので、辛さの度合いで選んでいただいてもいいかもしれません。

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1982年、東京大学教育学部教育学科卒業。1988年、同大学院教育学研究科教育学専攻博士課程修了。教育学博士(東京大学)。
東京女子大学文理学部専任講師、同助教授などを経て、1998年文教育学部助教授としてお茶の水女子大学に着任。2024年3月現在、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科人間発達科学専攻教授。150年史編纂担当。
専門は、日本教育史(教育制度・政策史)。

米田先生の推し本 一覧(2024/3/4更新)
 PDFでの一覧はこちらです

書名 / 著者等.
(出版社, 刊行年月. シリーズ名)
配架場所
請求記号
先生からのコメント
関東大震災描かれた朝鮮人虐殺を読み解く / 新井勝紘著
(新日本出版社, 2022.8)
図書館一般図書
216.9/A62
5辛 
虐殺場面を目撃した子どもや画家が描いた生々しい絵が次々と見つかりました。新井さんは自由民権運動の五日市憲法の研究者として有名な方です。
国防婦人会 : 日の丸とカッポウ着 / 藤井忠俊著
(岩波書店, 1985.4. 岩波新書; 黄-298)
ジェンダー研究所(図書館内)
367/F57
1辛 
民衆の戦争責任を追究した藤井忠俊さんの最初の著書です。藤井さんは私の歴史学の師匠です。国防婦人会は1930年代に活躍した「婦人」団体です。白いカッポウ着を来て出征兵士の見送りや神社清掃など、派手な戦争協力で存在感を示しましたが、1940年代に入ると、女性が家の外で活動することにブレーキがかかり、他の2つの「婦人」団体と統合して大日本婦人会となって消滅しました。
兵たちの戦争 : 手紙・日記・体験記を読み解く / 藤井忠俊著
(朝日新聞出版, 2019.7. 朝日文庫)
図書館一般図書
217.5/F57
3辛 
藤井さんの2冊目の著作です。「兵」とは一般の民衆から徴集または召集された軍人です。徴集兵は父母と別れて戦地に赴いた若者、召集兵は妻や子どもを残してきた夫・父です。手紙や葉書(軍事郵便)や戦地を持ち歩いた日記はその場、その時に書いた記録、体験記は帰国して戦後に書いた記録ですが、たくさんの戦争関係の資料を見てきた藤井さんが兵の心情を読み解いた作品です。
興隆の旅 : 中国・山地の村々を訪ねた14年の記録 / 中国・山地の人々と交流する会著
(花伝社, 2017.7)
図書館OG著作
222/C62
5辛 
興隆は河北省興隆県。1930年代からの日本の侵略戦争で日本軍による住民の虐殺が行われた場所です。仁木ふみ子さんを中心とする中国・山地の人々と交流する会のメンバーが1997年から11回にわたって現地に出向いてインタビューした記録です。日本軍による虐殺から生き残った人たちの貴重な証言です。読むのがつらくなるような話が次々と出てきます。
日本軍慰安婦 : 共同研究 / 吉見義明, 林博史編著
(大月書店, 1995.8)
ジェンダー研究所(図書館内)
217/N71
4辛 
1991年に金学順(キム・ハクスン)さんが慰安婦(性奴隷)とされていたことを公表しました(来日した金さんの話を私は同年12月9日に直接聞きました)。この本は1995年刊行です。この問題については、いまだに資料がない、詳細がわからない、という言い訳が横行していますが、95年の時点でこれだけのことがわかっていた、という視点で読んでいただけるといいと思います。のちにお茶大の大学院に進学する金富子(キム・プジャ)さん(当時東京学芸大学修士課程在学)が「朝鮮植民地支配と朝鮮人女性」(第8章2)を執筆しています。
朝鮮人学校の子どもたち : 戦後在日朝鮮人教育行政の展開 / 松下佳弘著
(六花出版, 2020.10)
図書館一般図書
378.9/Ma87
4辛 
ちょっと厚めの学術書ですが、全体像を知るためにはこのくらいの記述が必要です。1949年に、日本政府は日本中の朝鮮人学校を一斉に接収しました。日本の植民地ではなくなった朝鮮半島に帰るために朝鮮語を学んでいた学校や教室を警察力を使って取り上げたのです。こんな暴挙が許されるわけがありません。詳細は読んで知ってください。
朝鮮戦争無差別爆撃の出撃基地・日本 / 林博史著
(高文研, 2023.6)
図書館一般図書
217.6/H48
4辛 
朝鮮戦争では東京の横田基地と沖縄の嘉手納基地などからアメリカ軍のB29等の爆撃機が出撃し、朝鮮半島北部の都市や町や村を爆撃しました。第二次世界大戦末期の日本への空襲以上に徹底した無差別爆撃でした。本書はその詳細な記録です。今も続く北朝鮮とアメリカとの対立について考えさせられます。他人事ではありません。
教育勅語の何が問題か / 教育史学会編
(岩波書店, 2017.10. 岩波ブックレット; 974)
図書館本学教員著作
372.1/Ky4
3辛 
2017年3月、教育勅語を教材として用いることを容認する閣議決定がなされたことに対し、その決定が間違いであることを明確にするため、教育史学会が同年6月にお茶大でシンポジウムを開催し、その記録をもとにこのブックレットを編集しました。最近でも広島市長が研修のなかで教育勅語を活用して問題になっています。
ルポ大学崩壊 / 田中圭太郎著
(筑摩書房, 2023.2. ちくま新書; 1708)
図書館一般図書
377.2/Ta84
2辛 
話は変わって今の日本の大学のことです。大学は外と内の両方から壊れています。不正、私物化、ハラスメントといった言葉で多数の大学の問題状況がルポされています。お茶大は出ていません。でも、他人事ではありません。

* 展示では、米田先生の著作から、『学校沿革史の研究』 (野間教育研究所)、『お茶大26年の回顧』([米田俊彦] )をあわせて紹介します。

米田先生(2024/3/6)
米田先生
展示の様子
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[ポスターはこちら]

過去のシリーズ企画展示

第1回 加藤美砂子先生 乱読のススメ
第2回 三浦徹先生   発見と行動
第3回 小谷眞男先生  わたしを ・ なした ・ 本たち(とカルタ)
第4回 松島のり子先生  原点――そこから、それから。
第5回 難波知子先生  読書嫌いの私が出会った本 〈小さいおうち〉から〈青春の終わり〉・〈お別れの始まり〉まで
第6回 浅本紀子先生  私の思い出本~大学入学してから節目の時にあった本たち~
第7回 赤松利恵先生  地球環境の視点から毎日の食生活を考える
第8回 浅田徹先生   自分の研究観を作ったのは、他の領域の本だった
第9回 福本まあや先生  ダンスを語ろう、身体を知ろう。