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企画展示


シリーズ企画展示「先生の推し本」

「先生方のおすすめの本を知りたい!」という多くの学生の皆さんからのリクエストにお応えし、シリーズ企画展示「先生の推し本」としてお茶大の先生方おすすめの本を紹介しています。


先生方には、次の3つのテーマから1つ選択して、推薦いただきました。
  ① 専門からの推薦図書(専門領域の基本文献、その分野に進まれるきっかけとなった図書など)
  ② 個人的な興味・関心からの推薦図書
  (読後の印象がよかったもの、思い出に残っているもの、趣味・個人的関心に関係する図書など)
  ③ お茶大生に読んでほしい本(専門にかかわらず、大学生にぜひ読んでほしい推薦図書)


推薦いただいた本のリストと先生方からのコメントは、こちらのページで見ることができるほか、図書館1階スカイ グローバル ラーニング コモンズには実物を展示しています。

展示している本は、手に取ってご利用になれるほか、貸出も可能です (一部貸出不可のものもあります)。
ご来館の際はぜひお立ち寄りください。




 第5回 難波知子先生(生活科学部人間生活学科・生活文化学講座)
     2022年9月2日~12月11日

 テーマ 読書嫌いの私が出会った本
〈小さいおうち〉から〈青春の終わり〉・〈お別れの始まり〉まで

 <テーマ選択②>

正直に白状すると、読むのも書くのも大嫌い。なぜこの仕事に就いたのか、自分でも謎です。 そんな私でも、子どもの頃にいくつかはまった本があったり、学生時代にたまたま父が図書館から借りてきた本を読んで、その時の自分にぴったりだったり、不思議なご縁を感じる本がありました。
ここにご紹介する本は、決して厳選吟味したものではありませんが、思いつくまま、何か心にひっかかったものを選びました。 本はそれぞれ読むタイミングがあると言いますが、誰かの「今」読むべき本や気軽に楽しくページをめくってもらえる本が一冊でも含まれていれば幸いです。


難波先生

2003年、お茶の水女子大学生活科学部人間生活学科卒業。2006年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 博士前期課程修了、2010年、同 博士後期課程修了、博士(学術)。
2011年より お茶の水女子大学リサーチフェロー、2012年より お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科文化科学系助教、2017年より お茶の水女子大学大学院基幹研究院人文科学系准教授。
専門は、日本服飾史・服飾文化論。
2020年9月、著書『近代日本学校制服図録』(創元社, 2016)『ビジュアル日本の服装の歴史 3. 明治時代~現代』(ゆまに書房, 2018)などで、第7回国際服飾学会研究奨励賞を受賞。



 難波先生の推し本 一覧(2022/9/2更新)

PDFでの一覧は こちらです

書名 / 著者等.
(出版社, 刊行年月. シリーズ名)
配架場所
請求記号
先生からのコメント
のはらうた / くどうなおことのはらみんな
(童話屋, 1984)
図書館オープン書庫(一般図書)
911.5/Ku17/1-5
いつ頃読んだのかは忘れてしまいましたが、へびいちのすけ「あいさつ」(Ⅰ巻、44~45頁)が印象に残っていて忘れられません。自分のからだの一部なのに、まるで別人格があるかのように、“へび”とへびの“しっぽ”が会話している様子が面白く、「そんな表現の世界があるんだ!」と、新しい見方がひろがったことを覚えています。かまきりりゅうじ「おれはかまきり」(Ⅰ巻、70~71頁)も、夏になるとふと思い出す、お気に入りです。それぞれチャーミングな名前をつけられた生きものたちが語ることば、それらを通してひろがっていく世界を声にだして読んでみたくなる一冊です。後から知ったことですが、くどうなおこさんはお茶大の卒業生だそうです。
こぶたはなこさんのおべんとう / くどうなおこぶん ; いけずみひろこえ
(童話屋, 1983.10)
図書館絵本
376.1/Ku17
『のはらうた』と同じく、くどうなおこさんが手がけた絵本。子どもの頃、“こぶたはなこ”さんが大好きでした。なかでも、おべんとうをつくってお花畑にでかけるこの絵本がとくに好きで、食べものがおいしそうに描かれているところや、“こぶたはなこ”さんの食欲旺盛ぶり、その”こぶたはなこ”さんをあたたかく見守る”こりすすみえ”さんとの友情が素敵です。終わりにはふたりの部屋の様子が描かれていて、じっくり見ると、それぞれの性格や好みが垣間見られます。今考えてみると、私は暮らしの営みや風景に興味をひかれる子どもだったのだと気づかされます。当時、読者はがきを書いて送ったら、くどうなおこさん本人から直筆のお返事が届いてびっくり。今でも大事にとってあります。
大きな森の小さな家 / ローラ・インガルス・ワイルダー作 ; 恩地三保子訳 ; ガース・ウィリアムズ画
(福音館書店, 2002.6(福音館文庫, S-1 . インガルス一家の物語. 1))
図書館一般図書
933/W73
有名なのは『大草原の小さな家』かもしれませんが、インガルス一家の物語の第1巻は『大きな森の小さな家』。小学生くらいのときに、シリーズを読破しました。舞台は1870~80年代のアメリカで、大森林や大草原での開拓生活のなかで成長する少女ローラとその家族の物語です(全5巻)。
続きを読む お金を出せば何でも手に入る現在とはちがい、暮らしに必要なあらゆるものを手づくりしなければならなかった時代の、厳しさと豊かさを感じさせてくれます。お父さんは家も建てれば、食料調達のための狩猟(鉄砲の弾も手づくり)や獲物の解体から皮なめし、保存食作り(燻製器も手づくり)まで何でもします。かと思えば、家族を楽しませるためにバイオリンも弾くという多才ぶり。お母さんの家事仕事も目を見張るものがありますが、男女とも当時の人びとの生活技術の高さ、幅広さに圧倒されます。ある年代までは世界のどこでもこうした暮らしがあったのでしょう。失われてしまったからこそ、少し憧れます。

* 関連展示:大草原の小さな家(原作)
小さいおうち / 中島京子著
(文藝春秋, 2010.5)
図書館一般図書
913.6/N34
2010年に直木賞を受賞された作品。心ひかれたのは、書名と同じバーニジア・リー・バートンの絵本『ちいさいおうち』が好きだったから。中島京子さんの作品にもバートンの絵本が出てきます。加えて、人びとの暮らしに興味のある私にとって、「女中」という気になる存在が主人公であったことも、たぶん心にひっかかったポイント。
続きを読む 小説を読んだあと、2014年に公開された山田洋次監督の映画『小さいおうち』(主演:黒木華)も鑑賞しました。映画には小説だと描かれない家の内部の様子や登場人物の服飾も細かく設定されていて、見ごたえあり。松たか子さん演じる時子奥様のモダンな髪型やきもの、平井家の旦那様の着替えのシーンなど、昭和初期の衣生活が表現されていて、映画鑑賞もおすすめです。
ちいさいおうち / バージニア・リー・バートン文・絵 ; 石井桃子訳
(岩波書店, 1981.3)
図書館絵本
376.1/B94
この絵本では“おうち”のなかの様子は描かれていませんが、“おうち”を取り囲む外の世界がどんどん変貌していく様子が描かれています。ストーリーもさることながら、バートンの描く挿絵も好きでした。“おうち”のまわりの風景や人物が細かく描かれていて、色づかいも素敵です。最後に”おうち”が居心地のいい場所に移されるストーリーに安心しつつ、一方で「家って運べるの!?」と驚いた記憶があります。今でも「曳家」(建築物をそのままの状態で移動する建築工法)ってすごいなと感心します。お城だって、ホテルだって、そのまま運んでしまうのだから。いつか私も“ちいさいおうち”を建てて、お気に入りの家具で部屋をしつらえて、楽しく静かに暮らしたい…と夢見ています。
博士の愛した数式 / 小川洋子著
(新潮社, 2003.8)
図書館一般図書
913.6/O24
こちらは先に映画を鑑賞してから原作を読みました(映画は2006年公開、監督:小泉尭史、主演:寺尾聰)。家政婦役を演じられた深津絵里さんが昔から好きで、博士役の寺尾聰さんも役柄にぴったり合っていて、映画では静かな環境で穏やかに営まれる暮らしの風景が魅力的です。「記憶が80分しかもたない」数学を愛する博士が、家政婦とその息子に語る数のもつ美しさは、数学とあまり縁のなかった私にも面白く感じられました。
続きを読む それ以外に小説『小さいおうち』の「女中」ともつながる「家政婦」という存在が、私にとってはどこかひっかかるところがありました。「女中」や「家政婦」(今では男性の「家政夫」さんもご活躍)の仕事内容や役割から、家族のあり方も見えてくれば、一つ一つの家事仕事がもつ豊かな世界が垣間見られるように思います。家事ってどこか面倒くさいイメージがあるけれど、部屋を掃除してお花を活けたり、お料理を美しく盛ったり、洋服にぴしっとアイロンをかけたり、気持ちよく暮らしていくための工夫や技術がつまっています。家事や暮らしの必要最低限に加えられる+αに美意識や時代性があり、きっと博士も家政婦さんの手際の良さに、数学に通じる家事の美しさを発見したのではないでしょうか。
青春の終わった日 : ひとつの自伝 / 清水眞砂子著
(洋泉社, 2008.9)
図書館一般図書
910.2/Sh49
『ゲド戦記』の翻訳者(児童文学批評)として知られる清水眞砂子さんの自伝。幼少時代から大学時代までを振り返り、その後高校教員として勤め始めて数年後に迎えたという「青春の終わり」。「青春」とはいつ終わるのか、その時どんな気分なのかを教えてくれた一冊。はじめから通して読むのが苦手な人は、エピローグだけ読んでもいいかもしれません。
続きを読む それぞれ育った環境や年代は異なれど、思春期の危うさ、モラトリアムの苦悩、将来についての不安は誰しもつきまとうもの。過ぎてみれば忘れてしまいがちな葛藤の跡をこんなにも克明に綴り、ご自身をさらけだしてみせてくれる清水眞砂子さんの自伝は、これから社会に出るみなさんにおすすめしたい一冊です。私は清水眞砂子さんほど明確な「青春の終わり」を意識はしませんでしたが、この本を読んだタイミングがまさに「青春の終わり」に近い時期だったと思います。すがすがしい気分を感じつつ、その後もあれやこれや悩む日々が続いています。清水眞砂子さんの自伝を通して、自分のなかに生まれる“違和感”と対峙することが、既存の価値観に縛られない私の生き方を考えていくことにつながるのだと改めて気づかされました。
茨木のり子集 : 言の葉 / 茨木のり子著
(筑摩書房, 2002.8-2002.10)
図書館一般図書
918/I11/1-3
詩集に手を伸ばすことはこれまで滅多になかったのですが、茨木のり子さんの詩には二度も偶然めぐり逢いました。一度目は父が図書館から借りてきて勧めてくれたとき。このとき私の心にひっかかったのは、「汲む」(1巻、124~126頁)という一篇。茨木のり子さんの詩には「倚りかからず」(3巻、70~71頁)や「自分の感受性くらい」(2巻、60~61頁)など、こう強くありたい、こう強くあれたらと思わせる詩があるなかで、「汲む」は弱い、自信のない私をそのままでいいと思わせてくれるメッセージがありました。
続きを読む 「大人になってもどぎまぎしたっていいんだな」、みなさんにどれくらい伝わっているかわかりませんが、授業中の私はしょっちゅう「どぎまぎ」しています。そして二度目の出会いは、授業で染色の話をするときに紹介しているドキュメンタリー番組「失われた色を求めて」のなか。「色の名」(3巻、90~91頁)という詩が俳優の奥貫薫さんによって朗読され、詩に出てくる日本の豊かな色名が、植物染めの美しい染めものとともに映し出されます。日本に古くからあった色の名前は、美しい言葉の響きをもつのだと、茨木のり子さんの詩と奥貫薫さんの朗読によって知ったのでした。
長いお別れ / 中島京子著
(文藝春秋, 2015.5)
図書館一般図書
913.6/N34
『長いお別れ』は認知症の男性(父親)をめぐる家族の物語で、父が帰省中に勧めてくれた一冊でした。勧めた理由は、私の母が認知症をわずらっていたからです。母は今年に入ってすぐに緊急入院し、私が娘を出産した病院で亡くなりましたが、生前にこの作品を読んだとき、母との別れはもう始まっていたのだと気づかされました。
続きを読む 認知症が進んでいることに気づかないうちに、あるいは気づいていないふりをしている間に、母は私のよく知る母でなくなっていき、そのうちに母がどんな人だったのか、残念ながらクリアに思い出せなくなっていました。『長いお別れ』を読んで、そして母を見送ったあとに思うことは、「お別れの始まり」にははっきりとした境目がないことでした。だからこそ、入院して余命いくばくと知らされるまで、気がついていながらも何もできませんでした。認知症患者の家族の問題はこれからも多くの人が経験することになるでしょう。そして今度は私が夫や娘に介護されるときがやって来るかもしれません。祖母から母、母から私と繰り返された問題を、私から娘へとどう伝え、どう対処していくか、家族の問題としてだけではなく、社会制度や地域のサポート体制としても考えていかなければならないと痛感しています。

* 関連展示:映画化された作品(DVD)


* 展示では、先生が国際服飾学会研究奨励賞を受賞された近代日本学校制服図録(創元社, 2016), ビジュアル日本の服装の歴史 3. 明治時代~現代 (ゆまに書房 , 2018.7)をあわせて紹介します。



展示の様子

展示の様子 右
展示の様子 中央 展示の様子 左


難波先生(2022/9/6)

難波先生来館


[ポスターは こちら]


第6回は浅本紀子先生です。




過去のシリーズ企画展示

第1回 加藤美砂子先生 乱読のススメ

第2回 三浦徹先生   発見と行動

第3回 小谷眞男先生  わたしを ・ なした ・ 本たち(とカルタ)

第4回 松島のり子先生 原点――そこから、それから。


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