シリーズ企画展示「先生の推し本」第17回

「先生方のおすすめの本を知りたい!」という多くの学生の皆さんからのリクエストにお応えし、シリーズ企画展示「先生の推し本」としてお茶大の先生方おすすめの本を紹介しています。

先生方には、次の3つのテーマから1つ選択して、推薦いただきました。
  ① 専門からの推薦図書(専門領域の基本文献、その分野に進まれるきっかけとなった図書など)
  ② 個人的な興味・関心からの推薦図書
  (読後の印象がよかったもの、思い出に残っているもの、趣味・個人的関心に関係する図書など)
  ③ お茶大生に読んでほしい本(専門にかかわらず、大学生にぜひ読んでほしい推薦図書)

推薦いただいた本のリストと先生方からのコメントは、こちらのページで見ることができるほか、図書館1階西ゲート前 には実物を展示しています。

展示している本は、手に取ってご利用になれるほか、貸出も可能です(一部貸出不可のものもあります)。
ご来館の際はぜひお立ち寄りください。

このホームページや図書館で展示をご覧になった方は、アンケートにご感想をお寄せください。
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第17回 小玉亮子 先生(文教育学部人間社会科学科) 2025年12月15日~2026年2月末

 テーマ 面白いは無限大  <テーマ選択①~③>

実は、「面白いは無限大」という言葉は私が考えたものではありません。お茶の水の女子大学附属中学校の生徒さんたちが考えてくれた小玉亮子のキャッチコピーです。2024年度の附属中学校の2年生の授業で、本学の大学教員たちにインタビューをしてその教員のポスターを作る、という授業があり、私もその対象の一人になりました。生徒さんたちは、私の研究についてあらかじめ調べて、訪ねてきて、いろいろ質問してくれました。その時に、私は、ポスターに写真を載せても良いが、できるだけ小さくすること、あとはご自由にしてくださいと言いました。

そうしましたら、出来上がったポスターに「面白いは無限大」という言葉が書かれていたのです。私は無限大という言葉を使わないので、将来のある中学生さん言葉だなあとつくづく思ったのですが、でも、私が思っていることを言葉にしてくれたと思って嬉しくなりました(ありがとうございました)。

今回、この図書館の企画の話をいただいた時に、私は「世界はおもしろいコト・モノ・ヒトであふれている」とどこかで聞いたことのあるようなキャッチコピーを考えたのですが、いや、やはり、中学生さんたちがくれた言葉の方が素敵だと思ったので、こちらを使わせてもらいました。

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お茶の水女子大学家政学部児童学科を卒業後、東京大学大学院教育学研究科修士課程教育学専攻修了、同博士課程単位取得満期退学。日本学術振興会特別研究員(PD)、横浜市立大学大学院国際総合科学研究科准教授を経て、2008年お茶の水女子大学に着任。現在、基幹研究院人間科学系教授。担当は、文教育学部人間社会科学科子ども学コース、大学院人間文化創生科学研究科人間発達科学専攻保育児童学領域/コース。
研究テーマは、子ども、教育、家族、ジェンダー、幼児教育。



小玉先生の推し本 一覧(2025/12/15)
PDFでの一覧はこちらです。

書名 / 著者等.
(出版社, 刊行年月. シリーズ名)
配架場所
請求記号
先生からのコメント
1.違うことと共にあること
ジェンダー事典 / ジェンダー事典編集委員会編. (丸善出版, 2024.1.) 図書館参考図書
367R /J36
もし、事典界というものがあるなら、近年にない事典界のべストセラーです。2024年1月に刊行されて、その年のうちに、2回再版を重ねました。ジャンルを問わず、さまざまなことについて、ジェンダーの視点から見開き2ページ(ものによっては若干違いますが)で書かれています。ジェンダーは異なることと共にあることを考える手がかりです。ご関心のあるところを自由にお読みいただければ、と思います。
パレードへようこそ / マシュー・ワーカス監督 ; ステファン・ベレズフォード脚本. (KADOKAWA (発売・販売), 2015.9) 図書館視聴覚資料
778ZZ1-vd /W37
1980年代にイギリス起った炭鉱ストライキを、L G S M(レズビアンズ・アンド・ゲイズ・サポート・ザ・マイナーズ)という実在の団体が、金銭的支援を行ったという、歴史的事実を映画化したものです。見終わった時に、前を向こう!と、元気になれる映画です。
ちなみに、ハリーポッターシリーズに出てくるアンブロッチ先生役の女優さんがキーパーソン役で登場しているのも、見どころです。
エンジェルス・イン・アメリカ = Angels in America / マイク・ニコルズ 監督・製作総指揮 ; トニー・クシュナー原作・脚本.(ワーナー・ホーム・ビデオ (発売), c2004) 図書館視聴覚資料
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日本でも上演されてきた演劇です。私は、2024年に東京・新国立劇場で見ることができました。詳しい内容は専門家の解説に譲りたいと思いますが、フィクションではありますが、実在した弁護士ロイ・コーンが実名で出てきます。 同じ時代を扱った「パレードへようこそ」は共にあることの力を感じられる映画ですが、この演劇は共にあることの困難を知ることのできる演劇ではないか、と思っています。
2.社会に生きる子どもと教育
ベルリン3部作 / クラウス・コルドン作 ; 酒寄進一訳. (岩波書店, 2020.2-2020.7. 岩波少年文庫) 図書館一般図書
943 /Ko79 /1-3
私は子どもの頃から漫画やコミックが大好きですが、聖地巡礼をしたのは、このシリーズの一作目の主人公が住んでいたとされるベルリンのとある場所と、ニューヨーク市立図書館だけです。
原作は1980年代から1990年代にかけてターニングポイント三部作としてドイツで順次刊行された青少年向けの小説です。第一次世界大戦が終わりヴァイマル期が始まる1919年、そしてナチスが政権をとった1933年、最後は第二次世界大戦が終わる1945年を舞台に、ある家族の子どもから見た社会や政治が描かれています。私は夢中になって、この三部作を寝る間も惜しんで、ほとんど一気読みしました。
同志少女よ、敵を撃て / 逢坂冬馬 著. (早川書房, 2024. ハヤカワ文庫) 図書館一般図書
913.6 /A25
歌われなかった海賊へ / 逢坂冬馬 著. (早川書房, 2023.) 図書館一般図書
913.6 /A25
作者の逢坂冬馬さんは数々の賞を受賞しているので、ご存じの方も多いと思います。コルドンの小説にも重なりますが、青少年が戦争にどのように巻き込まれていくのか、そして子どもから大人や教師がどう見えるのか描かれていて、どちらもとても興味深い作品だと思います。しかも、これらの小説は、エンターテインメントに満ちた小説で、スリリングな展開と圧巻の最後には、一読者として息を飲みました。
奇跡の人 / アーサー・ペン監督 ; ウィリアム・ギブソン原作・脚本. (20世紀フォックスホームエンターテイメント (発売), c2001.)  図書館視聴覚資料 
778ZZ1-vd /P38
戦争から離れますが、「奇跡の人」は、日本でも何度も上演されてきた戯曲で、1962年に映画化され、アカデミー主演女優賞と助演女優賞を受賞した名作と言われる映画です。日本の図書館の児童書の伝記コーナーには必ずあるヘレン・ケラーに関わるお話ですが、奇跡の人という言葉が指しているのは、ヘレンの先生であるサリバン先生であることは、次第に認知されるようになっていることと思います。教育とは何かという、難問を考える時、重要な手がかりを提供してくれているのが、サリバン先生の教育であると思います。
One city, many children : Reggio Emilia, a history of the present. (Reggio Children, 2012.) 図書館展覧会カタログ 
376TT6 /C29 /2012
イタリアの北部にあるレッジョ・エミリアという一都市で行われている幼児教育が1991年のニューズウィーク誌の「10の世界のベストスクール」という特集で取り上げられたことに後押しされて、国際的に有名になりました。そして、この本の重要な点は、ここでなされている幼児教育には、レッジョ・エミリア市特有のコンテクストがあると述べている点です。幼児教育は政治的実践であるといったのはイギリスの教育学者ですが、まさにそれを実践しているのがここでなされた幼児教育です(来年には本書の翻訳が出る予定です) 。
3.世界から考える
映像の世紀 : the 20th century ; 1-3. (NHKエンタープライズ (発行・販売), c2005. NHK DVD . NHKスペシャル) 図書館視聴覚資料
209.7ZZ1-vd /E39 /1-2,B,K
見ていらっしゃる方も多いと思います。もし、まだの方がおられたら、ぜひ、昔放映されたものも含めてどこからでも、ご覧ください。音楽もナレーションも素晴らしく、皆さんもどこかでこのテーマ曲を聞いたことがあるのではないでしょうか。
現在は、フェイクの映像を簡単に作ることができる時代ではありますが、しかし、現在のような技術が発達する前から、フェイクやプロパガンダの映像が作られていたことそれ自体も番組となっていて、私たちが、何をどう見るのか、考える手がかりにもなると思います。
魂を統治する : 私的な自己の形成 / ニコラス・ローズ著. (以文社, 2016.6.) 図書館一般図書 
361.4 /R72
見えないことを見たい、と思っても、エスパーでもなければ他人の心の中を見ることはできません。現代の「ヒューマンテクノロジー」は、他人の考え・感情といった見えないものを可視化しようとする試みとも言えます。本書は、それが、数値化や標準化さらには、正常と異常を可視化するものとして機能していることを、第一次世界大戦の時の兵士を対象とした研究から始めて、子どもへのテクノロジーも含めて、分析されています。そして、このテクノロジーによる「統治」に最も有効だったターゲットの一つが、子どもであったという指摘は、とても重要な指摘だと思います。
ハンナ・アーレント = Hannah Arendt / マルガレーテ・フォン・トロッタ監督・脚本. (ポニーキャニオン (発売・販売), c2012) 図書館視聴覚資料
311ZZ1-vd  /Tr7
この映画を試写会で見たときの感動は忘れられません。それほど大きくない会場でしたが、終わった瞬間に観客全員が立ち上がって、拍手をし、それはしばらく鳴り止みませんでした。これ以降、私は、この映画は何度見たかわかりませんが、今でも見る度に圧倒されます。私たちにとって、「考える」ということがいかに重要なのか、本気で考えさせられる映画です。何よりも映画の最後で行われるアーレントの講義のシーンは、かっこいい!という言葉がぴったりな圧巻の講義です。
剝き出しの帝国 : レイシズムと植民地主義はいかに世界を支配し続けているのか / カィンディ・アンドリューズ 著. (明石書店, 2025.) 図書館一般図書
316 /A48
本書の著者であるイギリスのブラックスタディーズの研究者のアンドリューズは「カントはレイシストだ」と断言します。西洋思想や西洋の歴史を相対化する眼差しを持つことをすでに学んできたつもりだったのに、この本は改めて、私たちのやってきたことが「ホワイトウォシュ」ではないかと指摘し、リフレクション(反省)すべきであると迫ります。この夏、この本を通じて、私は、知識としては知っているつもりだった、という言い訳はもはや空虚でしかない、ということを痛感しました。

小玉先生(2025/12/17)

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展示の様子

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[ポスターはこちら]

過去のシリーズ企画展示

第1回 加藤美砂子先生 乱読のススメ
第2回 三浦徹先生    発見と行動
第3回 小谷眞男先生   わたしを ・ なした ・ 本たち(とカルタ)
第4回 松島のり子先生 原点――そこから、それから。
第5回 難波知子先生  読書嫌いの私が出会った本 〈小さいおうち〉から〈青春の終わり〉・〈お別れの始まり〉まで
第6回 浅本紀子先生  私の思い出本~大学入学してから節目の時にあった本たち~
第7回 赤松利恵先生  地球環境の視点から毎日の食生活を考える
第8回 浅田徹先生   自分の研究観を作ったのは、他の領域の本だった
第9回 福本まあや先生  ダンスを語ろう、身体を知ろう。
第10回 米田俊彦先生      辛口の本をぜひ。
第11回 井上登喜子先生  わたしを動かした本
第12回 五十嵐悠紀先生 「使いやすさ」について考えてみよう~ヒューマンコンピュータインタラクション分野への誘い~
第13回 森山新先生    ことばの学びが世界の対立を越える道をつくる
第14回 大薮海先生    学問への入り口はさまざま―私はマンガとゲームから入りました―
第15回 千葉優作先生   数学者・物理学者の人生
第16回 佐藤有理先生  トップ研究者の言葉から刺激をもらう