HOME > 図書館について > 企画展示

企画展示


シリーズ企画展示「先生の推し本」

「先生方のおすすめの本を知りたい!」という多くの学生の皆さんからのリクエストにお応えし、シリーズ企画展示「先生の推し本」としてお茶大の先生方おすすめの本を紹介しています。


先生方には、次の3つのテーマから1つ選択して、推薦いただきました。
  ① 専門からの推薦図書(専門領域の基本文献、その分野に進まれるきっかけとなった図書など)
  ② 個人的な興味・関心からの推薦図書
  (読後の印象がよかったもの、思い出に残っているもの、趣味・個人的関心に関係する図書など)
  ③ お茶大生に読んでほしい本(専門にかかわらず、大学生にぜひ読んでほしい推薦図書)


推薦いただいた本のリストと先生方からのコメントは、こちらのページで見ることができるほか、図書館1階スカイグローバルラーニングコモンズには実物を展示しています。

展示している本は、手に取ってご利用になれるほか、貸出も可能です (一部貸出不可のものもあります)。
ご来館の際はぜひお立ち寄りください。





 第8回 浅田徹先生(文教育学部言語文化学科)  2023年6月12日~9月15日

 テーマ 自分の研究観を作ったのは、他の領域の本だった
 <テーマ選択②>

私は日本古典文学(和歌)の研究者である。しかし自分の研究姿勢・学問観を育てたのは、学生時代に読んでいた他領域の本だったと思う。 今回は、専門領域の本はいっさい挙げないが、すべて私の現在の研究に結びついている。


浅田先生


東京都立国立高校卒業。1986年、早稲田大学第一文学部日本文学専修卒業。
早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士前期課程修了。同 博士後期課程単位取得満期退学。
専門は、日本中世文学(和歌、連歌)。
国文学研究資料館文献資料部助教授などを経て、2001年よりお茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授、2007年より同大学院人間文化創成科学研究科准教授、2012年より同大学院人間文化創成科学研究科教授。



 浅田先生の推し本 一覧(2023/6/12更新)

PDFでの一覧は こちらです

書名 / 著者等.
(出版社, 刊行年月. シリーズ名)
配架場所
請求記号
先生からのコメント
失敗の科学史 / 筑波常治, 大沼正則編著
(日本放送出版協会, 1973.7)
[入手不可] 実は、これは当時読んだ本ではない。学部一年次で聴いた「科学論」の先生が筑波先生で、そこで「それぞれの時代には、それぞれの考え方があり、後から貶めるべきではない」と習ったのが後々まで大事だった。クーンのパラダイム論について聴いたのもこの授業だった。この本もそうした立場で編集されている。
当時読んだ本では、村上陽一郎『歴史としての科学』(筑摩書房)を同趣のものとして挙げたい。

* 入手困難なため、先生個人の蔵書を展示します(貸出不可)。所蔵している国際子ども図書館や公共図書館などを利用下さい。
時間と自由 / ベルクソン著 ; 中村文郎訳
(岩波書店, 2001.5. 岩波文庫 ; 青(33)-645-9)
図書館文庫・新書
135/B38
ベルグソンは学部時代に何冊か読んだが、「時間」「歴史」についてのイメージは鮮烈だった。それは「文学史」にも当てはまる。他に『物質と記憶』も感動したが、いずれも文章の美しさ・比喩の素晴らしさといったことが関わっていたように思う。
思想と動くもの / ベルクソン著 ; 河野与一訳
(岩波書店, 1998.9. 岩波文庫 ; 青(33)-645-4)
図書館文庫・新書
135/B38
フルハウス : 生命の全容 : 四割打者の絶滅と進化の逆説 / スティーヴン・ジェイ・グールド [著] ; 渡辺政隆訳
(早川書房, 2003.11. ハヤカワ文庫 ; 5279 . ハヤカワ文庫NF ; NF286)
図書館一般図書
467/G73
「進化」「発展」ということを相対化し、それは「多様化」(ある意味、エントロピーの増大ということである)の一側面でしかないことを明らかにする本。これも自分の文学史観に強い影響を与えている。
モーツァルト演奏法と解釈 / エファ・バドゥーラ=スコダ, パウル・バドゥーラ=スコダ著 ; 堀朋平, 西田紘子訳
(音楽之友社, 2016.5)
図書館一般図書
762.3/B14
私が中学~高校生の頃、音楽界は「原典版」ブームだった。史料批判という方法は、のちに日本古典文学で専門的に実践することになったが、その概要を知ったのはこの本による。むしろこれでその面白さを理解したので、古典作品の批判的処置に興味を持ったのである。ピアノ教師だった母の蔵書で、今でも手許に置いている。
シューマニアーナ / 前田昭雄著
(春秋社, 1983.9)
図書館オープン書庫(一般図書)
762.3/Ma26
楽曲分析という方法の面白さを示してくれた本。作品分析については、文学作品より先に音楽作品の分析を知ったような次第だった。
日本伝統音楽の研究 : 合本 / 小泉文夫著
(音楽之友社, 2009.6)
図書館一般図書
762.1/Ko38
民族音楽学の名著。理論的視点の設定が、自分の聴いている音楽に対する認識をこんなにも変えるということを経験した。
音楽のよろこび / レナード・バーンスタイン著 ; 吉田秀和訳
(音楽之友社, 1966.2)
図書館オープン書庫(一般図書)
760.4/B38
作品について説得力をもって「語る」ことが可能だと知った本。この本のベートーヴェン「運命」の解説は、作曲家が遺したスケッチとの比較で作品の素晴らしさを語る内容で、いまだに忘れがたい。古典和歌研究の論文でその方法を拝借したことが3回ほどある。
福音書のイエス・キリスト. 1-4. オンデマンド版
(日本キリスト教団出版局, 2018.2)
図書館一般図書
193.6/F76/1-4
聖書学の本であるが、当時所属していた大学合唱団のレパートリーに宗教音楽が多かったために手に取った(私はクリスチャンでは全くない)。福音書群は相互に類似した内容を持っているものだが、それらの比較検討により、それぞれの生成過程と編纂意図を明らかにするもの。作品の「成立論」というジャンルについて、有益な示唆を受けた。
トマスによる福音書 / 荒井献 [著]
(講談社 , 1994.11. [福音書のイエス・キリスト])
図書館一般図書
193.9/A62
眼の神殿 : 「美術」受容史ノート / 北澤憲昭著
(筑摩書房, 2020.12. ちくま学芸文庫)
図書館文庫・新書
702.1/Ki75b
芸術の「制度論」について知った本。これは他のすべてのジャンルに適用可能だし、実際に自分の研究対象で思考実験を何度もした。
現象学的社会学の応用 / アルフレッド・シュッツ [著] ; 桜井厚訳
(御茶の水書房, 1980.8)
図書館オープン書庫(一般図書)
361/Sc8
社会学の視点を作品分析に応用する発想が興味深かった。この後バーガールックマンの著書に触れる契機になった本。社会学的思考は、(そのままではないが)自分の多くの論文に影響を与えている。
社会学の社会学 / ピエール・ブルデュー [著] ; 田原音和監訳 ; 安田尚 [ほか] 訳
(藤原書店, 1991.4. Bourdieu library)
図書館オープン書庫(一般図書)
361/B67
ブルデューの主著群はさっぱり読んでいないが、こうした小論集でもその考え方は十分わかる。文化に対する辛辣な社会学的把握(というよりその裏にある権力関係の暴露)は基本的にはわかりやすいもので、自分の研究とも通底するところがあると感ずる。
正統と異端 : ヨーロッパ精神の底流 / 堀米庸三著
(中央公論社, 1964.12. 中公新書 ; 57)
図書館文庫・新書
190.2/H88
中世キリスト教史の本だが、「正統」な集団と「異端」な集団がどのような言説を展開してしまうかについての分析は、実は鎌倉時代後期の歌人たちの論争にもみごとに当てはまる。
驚異と占有 : 新世界の驚き / S.グリーンブラット [著] ; 荒木正純訳
(みすず書房, 1994.4)
図書館リベラルアーツ資料(LA4)
250/G82
この本単独というより、甚野尚志『隠喩のなかの中世』や、カントロヴィッチ『王の二つの身体』などを拾い読みした印象を合わせた総体として、ある時代の言説の構造と社会の在り方の相関について興味を持った。それはある意味、自分の現在の研究そのものとも言える。
自然発生説の検討 / パストゥール著 ; 山口清三郎訳
(岩波書店, 1970.4. 岩波文庫 ; 7189-7190)
図書館文庫・新書
461/P26
人を説得するための「実証的方法」ということを最も明瞭に示してくれた本。
マリヤの讚歌 : 他一篇 / マルティン・ルター著 ; 石原謙, 吉村善夫譯
(岩波書店, 1941.2. 岩波文庫 ; 青-45)
図書館地下書庫(旧分類)
198/L97s/1(4)
言説の「精度」は実証によって上げることができるが、言説の「強度」は論者の立場によって決まるのだということを知った本。 『現世の主権について』なども思い出深い。
マグニフィカート(マリヤの讃歌)訳と講解 一五二一年 / 内海季秋訳
(所収: ルター著作集 / Martin Luther [著] ; ルター著作集委員会編. 第1集第4集. 聖文舎, 1984.7)
図書館オープン書庫(一般図書)
M40/310/64
地球史を読み解く / 丸山茂徳編著
(放送大学教育振興会, 2016.3. 放送大学大学院教材 ; 8960615-1-1611 . 自然環境科学プログラム)
図書館放送大学テキスト
450Hd//2016
これはごく最近の本。「歴史」を「全体的なシステム」のレベルで考える上でとても有用だと思ったので、最近の本だが挙げた。



浅田先生(2023/6/13)

浅田先生来館


展示の様子

展示の様子 右 展示の様子 左
展示の様子 中央


[ポスターは こちら]


第9回は福本まあや先生です。




過去のシリーズ企画展示

第1回 加藤美砂子先生 乱読のススメ

第2回 三浦徹先生   発見と行動

第3回 小谷眞男先生  わたしを ・ なした ・ 本たち(とカルタ)

第4回 松島のり子先生 原点――そこから、それから。

第5回 難波知子先生  読書嫌いの私が出会った本 〈小さいおうち〉から〈青春の終わり〉・〈お別れの始まり〉まで

第6回 浅本紀子先生  私の思い出本~大学入学してから節目の時にあった本たち~

第7回 赤松利恵先生  地球環境の視点から毎日の食生活を考える


図書館カレンダー

年間カレンダーダウンロード

>>年間カレンダーへ